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二酸化炭素などの温暖化ガスは大気圏の温度を上げるだけではない。それは当然海洋の温度も上昇させる。地球全体の温度が上がるのだから、海面の温度もあがるのは道理だが、温暖化ガスは、別の連鎖を通じても、海洋に悪い影響を及ぼし始めている。 大気中に放出された二酸化炭素は、海によっても吸収されるが、その結果海水が酸化され、また酸素欠乏状態をきたしやすくなる。というのは、二酸化炭素は海中の炭化カルシウムを分解させるとともに、酸素を吸収して炭酸を生成するからだ。 炭化カルシウムは、プランクトンなど植物連鎖の底辺に位置する生き物にとって、繁殖をささえる栄養源だ。それが減少し、しかも酸素不足に陥った海は、生命を育くむことが困難になる。 すでに異変の現れた海が、あちこちで報告されている。アメリカ西海岸のワシントン州では、カキがとれなくなってから4年になるが、これは海水の酸化が原因だと分析されている。メキシコ湾では、酸素欠乏が深刻化して、エビがいなくなった。また、海洋生物を原料にして作られている薬品類は、原料調達の深刻な危機に直面している。海草に付着する菌類や、深海の泥の中で繁殖するバクテリア類が、環境の変化によって消滅しつつあるからだ。 いまのところ、北太平洋とアラスカ沖が、もっとも酸化の進んだ海だと見られている。これ以上酸化が進めば、鮭をはじめとした豊かな海の恵みも、枯渇するのではないかと懸念されている。 有名な海洋学者ジャック・クストーの孫娘アレクサンドラ・クストーらは、このような状況を憂慮して、世界各国が海を守るために共同して立ち向かうように呼びかけている。 「エネルギー、物資の輸送、気候変動、インフラストラクチャー、農業、都市開発のすべてにわたって、海洋環境への視点を組み込むべきだ。なぜならこれらはすべて、相互に関連しあっているからだ」そうクストー女史は主張する。 海洋は地球の表面積の70パーセントを占める。それが取り返しのつかない打撃を受ければ、地球全体にとってもとりかえしのつかないことになる。我々は海洋環境にも、もっと目を向けるべきだろう。 |
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