地球と宇宙の科学
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崩れる大地:日本列島を襲う豪雨と地震



今年の夏も九州や紀伊半島では記録的な豪雨に見舞われ、大規模な山津波が各地で発生した。深層崩壊と呼ばれる現象だ。これは長い事件をかけて雨が降り続いた結果、地層に水がたまって浮力がはたらき、山の斜面が根こそぎ崩れる現象だ。

深層崩壊には二つのタイプがあるという。一つは上述したような、大雨によって引き起こされるもの、もう一つは、地震によって引き起こされるものだ。この二つのタイプの深層崩壊が、どのようなメカニズムによって引き起こされるかについて、NHKの科学番組が検証していた。(NHKスペシャル「崩れる大地:日本列島を襲う豪雨と地震」

大雨によるタイプの深層崩壊については、昨年9月の台風で紀伊半島の宇井地区で起きた山津波を材料にして検証していた。この時は、烈しい雨が二日間にわたって降り続け、総雨量が800mmを超えたことから、深層崩壊が起こった。その過程をたどると、深層崩壊が起きた地層は流れ地盤と言って、幾重にもレア上になった地層の隙間に水がたまり、その水によって地盤全体に浮力が働き、100メートルもの深さから、それこそ根こそぎ崩れていた。その結果宇井地区では、死者行方不明が80人に上る大惨害につながった。

これとよく似たメカニズムによって、今年は九州地方を中心に、200か所以上で深層崩壊がおきたということだ。

地震による深層崩壊は、昨年の東日本大震災のときに、東北地方の各地で広範囲に起きた。これにも共通する特徴が見つかった。地震による深層崩壊が起きた地層は、ハロイサイトといって、粘土状の地層の上に火山灰が降り積もってできていた。火山灰の地層は空気を含んでおり、強いショックに対して動きやすいという性質を持っている。それ故、東日本大震災の時には、強烈な振動がハロイサイトを襲い、粘土状の地層の上に乗ったスカスカの土砂の層がゆすられ、大規模な地滑りを起こしたというわけである。

雨による深層崩壊も、地震による深層崩壊も、今しばらくは頻発するのではないかと予想されている。一つには、地球温暖化の影響による海水温上昇によって、日本列島を台風が襲う確率が高まっていること、もう一つは、東日本大震災が引き金になって、日本列島に地震が発生する確率が高まっていること、この二つの事情が働いているからだ。

それ故、台風が通りやすい道筋の地層に流れ地盤がないかどうか、あるいは地震に見舞われやすい地層にハロイサイトが存在しないかどうか、ち密な調査を行い、そのうえで深層崩壊に対する備えを行う必要がある、番組はそう結んでいた。(映像は自身による地盤の崩壊:NHKから)







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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2012
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