地球と宇宙の科学
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気象異変(積乱雲のバックビルディング現象):荒れる日本の夏


今年の夏も異常な気象が日本列島を見舞っている。7月24日から26日までの3日間にわたり、北九州及び山口県で、集中豪雨による被害が続出し、福岡市中心部では実に時間雨量116ミリという未曾有の事態が起こった。また7月27日には、群馬県館林市で巨大な竜巻が発生し、大きな被害を引き起こした。こうした事態をさして、人々は気象異変といっている。

時間あたり100ミリを越えるような雨が、どれほどすさまじいものか、NHKがその実験の様子を公開していたが、10メートル先が見えないほど視界がさえぎられ、また90デシベルを越える騒音のため、人の話し声も聞こえないほどだ。また川や水溜りは瞬く間に増水して、あっという間に危険な状態になる。

この雨を体験した人は、天から槍が降ってくるようだと表現していたが、すさまじさのほどがよくわかろうというものだ。

このような現象をひきおこす原因は、バックビルディングといわれる、巨大な積乱雲の形成にある。通常の積乱雲はきわめて局所的な現象で、そのエネルギーはせいぜい一時間ほどの間に20ミリから30ミリ程度の雨を降らすくらいだ。ところがバックビルディングといわれるものは、長い時間消滅せず、100ミリ前後の膨大な雨を数時間にわたって持続的に降らす。通常の積乱雲が四つも五つも重なったようなものだ。しかも局地的な現象にとどまらず、かなり広い範囲で起こる。

この夏こうした現象が頻繁に起きるのは、日本の上空に梅雨前線が居座っているためだ。前線にそって冷たい空気が流れ込むと、そこへ太平洋上の暖かい水蒸気が引き寄せられ、巨大な積乱雲を次々と発生させる。これが被害を甚大かつ広範囲なものにしているのだ。

毎年7月下旬ともなれば、太平洋高気圧が張り出してきて、梅雨前線を北に押しやり、やがては消滅させる。ところが今年はその高気圧が未発達で、逆に今後消滅するのではないかと予想されるほどである。その結果前線はいつまでも停滞し続け、巨大積乱雲を次々と発生させる。この調子だと、今後も集中豪雨が、前線に沿った各地で発生し続ける可能性が高い。

昨年、日本列島各地はゲリラ豪雨とよばれる局所的な集中豪雨に見舞われた。そのときも時間100ミリを越えるすさまじい雨が降ったところはあった。しかし昨年と今年とでは、上述のように発生のメカニズムがかなり違う。昨年は偏西風の流れが日本列島の上空にも及んだため、それが積乱雲を発生させたわけだが、今年は前線の存在が決定的に作用している。その背後には、太平洋高気圧の異常がある。

だがどちらの場合においても、地球温暖化が影響していることは間違いないようだ。いったん積乱雲が発生すると、それへ向けて暖かくなった海面から膨大な水蒸気が供給される。それが雨のエネルギーを強大にするわけだが、そのプロセスに地球温暖化の影響が大きく関わっている可能性が大きいのだ。







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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2012
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