地球と宇宙の科学
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アイスランド火山噴火の地球環境への影響



先日大噴火を起こしたアイスランドの火山エイヤフィアトラヨークトル(上の写真:Daniel Stone Newsweek)が放出した膨大な物質は、一時期ヨーロッパ北部の空を覆い、飛行機の運航が全面ストップするなど甚大な影響をもたらしたが、果たしてその影響が地球環境にどれほど及ぶのか、専門家の間で大きな議論となってきた。

地球の温暖化、寒冷化の双方の面において、大した影響はないだろう、というのが専門家たちのいまのところの結論だ。というのも騒がれた割に、噴火による排出物の規模が小さかったからだ。

温暖化に大きくかかわるのは二酸化炭素だが、この噴火で排出された二酸化炭素は日量で10000トン前後。これは2000台の車が日々排出する二酸化炭素に相当する量だ。ピナトゥボ火山が噴火したときには、総量にして4200万トンの二酸化炭素が排出されたというから、それに比べれば無視できるほどの規模だ。ピナトゥボの場合には、二酸化硫黄など寒冷化の要因となる物質のほうがはるかに多く排出され、その結果温暖化よりも寒冷化のほうに働いた。

その寒冷化物質の影響についても、今回はそう大きくはないと専門家は見ている。二酸化硫黄のほか、粉塵や岩石など太陽光線をさえぎる物質の量も膨大なものとはいえず、大気中に拡散するまもなく、雨によって地上に落下するだろうと見られている。もっともそれによって地表が覆われ、植物の生成に悪い影響がでることは懸念される。

今回の噴火が大きく騒がれたのは、ヨーロッパを直撃したことで世界中に深刻な影響をもたらしたことによるところが大きい。これくらいの規模の爆発はアラスカの火山では毎年数回記録されているが、それがそんなに話題にならないのは、人口の希薄なところでおきているからだ。

だが安心してばかりもいられない。エイヤフィアトラヨークトルの噴火は、それよりはるかに巨大なカトラの噴火を予想させる。実際過去の歴史では、この両者の噴火の間に深い関連があった。今回もそのとおりになって、カトラが噴火するような事態が起きれば、地球は間違いなく大きなダメージを受けることになるだろう。







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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2012
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