地球と宇宙の科学
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冥王星 Pluto:氷と色彩の世界



筆者が少年だった頃は、太陽系の惑星は九つあると教えられていた。学校の授業で先生が惑星の名前を列挙しなさいというと、生徒たちは声を揃えて「スイキンチカモクドッテンカイメ」と答えたものだ。太陽に近いものから順に、水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星、冥王星のそれぞれの頭文字を並べた言い方だ。こうすると子どもには覚えやすい。

ところが2006年に開催された国際天文学会で、一番外側の冥王星が惑星の仲間から外されてしまった。惑星というには余りにも小さく、太陽系の外周部には冥王星のような天体がほかにいくらでもあるからという理由だった。

冥王星は地球からあまりにも離れているために、他の星に比べてわからないことが多かった。発見されたのだって1930年と、そんなに古いことではない。最近は冥王星の外側にもっと大きな天体が発見されてもいる。

いまのところ主に氷から出来ている天体であること、248年かけて太陽の周りを一周すること、中心軸が地球のそれよりも大きく傾いていること、これくらいのことしか分っていない。

このたびNASAが冥王星の表面を映し出した詳細な映像を公表した。(上の写真)2002年から2003年にかけてハッブル望遠鏡が収集した数多くの写真を元に合成したものだ。これを1990年台に捉えられた映像と比較すると、かなりの相違があるという。

まずまだら模様のコントラストが一段と深まっていることだ。北極の色が一段と明るくなり、南極近くの暗い部分に比較して著しい対象をなしている。それと関連して表面に鮮やかな色彩の分布が見られることだ。このように表面が色彩豊かな惑星は、地球のほかは火星しかない。冥王星はその火星に比べてもカラフルだといえる。

これは星の表面を覆っている氷と太陽からやってくる紫外線との相互作用によって生じる現象らしい。冥王星の表面には炭素、窒素、メタンなどが充満し、それが紫外線に反応してさまざまな色を出すらしいのだ。

北極近くが白っぽく輝いているように見えるのは、窒素ガスが凍って地表を広く染めていることの現われだろうと考えられている。冥王星の地軸の傾きは非常に大きく、太陽から遠い北極には光が届きにくいのに対して、太陽に近い南極は太陽光線の影響を強く受ける。その結果北極は冬の世界、南極は春の世界になっているのだろうと推測されている。

冥王星には公転の周期に従って季節のリズムがある。地球と比べると公転期間がはるかに長いので季節もゆっくりと交代する。発見されて以来表面がずっと安定してみえたのは、このことの結果だ。ところが2000年を境に冥王星はもっとも太陽に近い軌道を回るようになった。つまり星全体が春あるいは夏の季節に入ったわけだ。そのことに伴って星の表面が活発化し、色彩分布に大きな変化が現れたということなのだろう。

NASAは2015年に探査衛生を冥王星に最接近させて、表面の映像をもっと詳しく調査する計画だ。そのときの冥王星の表面がさらにどのような変化を見せているか、天文学者ならずとも楽しみだ。







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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2012
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