地球と宇宙の科学
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46億年の旅人 流星:宇宙の渚



NHKスペシャル「宇宙の渚」シリーズ最終回は「46億年の旅人 流星」 宇宙飛行士古川さんが撮影した流星の映像300枚をもとに、流星発生のメカニズムを説明するかたわら、流星が地球に生命をもたらした可能性などについて、興味深い解説を行っていた。

流星は宇宙空間を遊泳している星屑が地球の大気圏に衝突した時に起こる現象だ。星屑の大きさは1センチ未満のものが殆どだというが、そんな小さな物質でも、大気圏とぶつかる時には強力なプラズマを発生させ、それが光の流れとなって見えるのだという。

流星が発生するのは地上から80-120キロの高度というから、オーロラよりも低い地点だ。多くの場合、地上から見ても、天空からみても、みな同じ方向に流れていくように見える。それは、星屑が集まっている大河のような層と、それに突入している地球との位置関係によるのだそうだ。

星屑はでたらめに浮かんでいるのではなく、一定の法則性に従って浮かんでいる。星屑は彗星の成分が太陽熱などによってはがれたものだが、それが大河のような集合体となって、彗星と同じ軌道を流れる。その軌道に地球が突入するときに、大量の流星が発生するというわけだ。

番組で紹介していたペルセウス座流星群やしし座流星群は、こうした星屑の大河を地球が横切る時に発生する現象なのだ。

ところで、これらの流星には有機物質が含まれていることがわかっている。そのことから、そもそも地球に有機物を運び込み、生命を誕生させたのは、流星ではなかったかという仮説が出てきた。

だが、流星の殆どは、大気圏に突入するときに完全に破壊されてしまうから、そこに含まれている有機物質も破壊されてしまうはずだ。しかし、流星の中には、破壊を免れて地上に達するものもあるのではないか。

こうした問題意識から観察すると、たしかに一部の星屑は破壊を免れて地上に到達することがわかった。そうした星屑は、綿屑のように軽く、ふわふわしていて、そのため大気との衝突のショックを和らげているのではないか、と見られている。

古川さんが宇宙に興味を抱くようになったきっかけのひとつに、流れ星の観察があったそうだ。母親と一緒によく夜空を見上げたらしい。そんな話を聞いて、筆者も自分の少年時代を思い出した。

まだ幼稚園に通っていたときのこと、母親に連れられてどこかに遊びに行った帰りに、夜空に沢山の流星が流れていくのが見えた。すると母親は、「さあ、駆けていって、流れ星をつかまえてごらん」といった。まだ小さな子供だった筆者には、走っていけば、本当に流れ星が捕まえられるのではないかと、思われたものだ。

筆者は古川さんのように、宇宙飛行士にはならなかったが、いまでも空を見上げるのは大好きだ。また、小さい時に流れ星に向かって駆けた経験があったので、大人になってからジョン・ダンの次の詩を読んだときは、妙に心が騒ぐのを覚えたものだった。

  さあ行け 流れ星をつかまえろ
  マンドレークを根こそぎ引っこ抜け
  過ぎ去った日々がどこに消えたか
  悪魔の股を裂いたのは誰か 言ってくれ
  どうしたら人魚の歌が聞けるのか
  嫉妬の針を避けられるのか 教えてくれ
   そうすればどんな風が
   正直な心を
  育んでくれるかがわかるから







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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2012
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