地球と宇宙の科学
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暗黒物質(Dark Matter)の手がかりを発見?


暗黒物質(Dark Matter)の存在は、1933年にスイスの天体物理学者フリッツ・ツヴィッキー(Fritz Zwicky)によって予言され、その後70年代には銀河の回転速度を観測する中でその存在が確信されるようになったが、まだその実物が観測されるには至っていない。先般話題になったヒッグズ粒子の場合、1964年に予言されて以来48年後には観測されていることに比べると、気の遠くなるような話である。

というのも、暗黒物質は光などの電磁波を出さず、直接観測されることがないからである。それにもかかわらずその存在が推定されるようになった理由は、こうした物質の存在を前提にしないと、銀河系が安定せず、バラバラに解体してしまうと考えられるからである。暗黒物質は銀河系を凝集させる作用を果していると考えられたわけである。

そこで、この物質をどうやったら捉えることが出来るのか。科学者たちは、この物質が仮説上の粒子(ニュートラリーノ)からなっていて、それらが衝突するときに、電子と共に陽電子が発生する、と考えた。そこで、この陽電子の存在を確認できれば、暗黒物質の存在の証しとして考えることができるのではないか。

今般、この仮説に基づいた実験の結果、宇宙空間から多量の陽電子を収集することができた。そこで科学者たちは、いよいよ暗黒物質にたどり着けたのではないかと、小躍りして喜んだという。

研究を率いたのはノーベル賞学者のサミュエル・ティン(Samuel Ting)教授。微小粒子の宇宙線を捉えることのできる「アルファ磁気分光器(AMS)」を国際宇宙ステーションに据え付け、1年半にわたって300億個の宇宙線粒子を捉えたところ、そのなかに640万個の電子と40万個の陽電子があった。この陽電子こそ、暗黒物質の構成要素たるニュートラリーノ同士の衝突の結果生じたものではないか。ティン氏らはそう推測するのである。

だが陽電子は超新星爆発や中性子星からも発生する。だからそれらが暗黒物質の証拠だと断定するには、更に詳細なツメが必要ということらしい。





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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2012
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