地球と宇宙の科学
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人間が生物の進化に及ぼす影響



人間が地球環境の変化に巨大な影響を及ぼしてきたことは間違いないが、その影響の中でも最も注目すべきなのは、生物の進化を促進しているということだ。その中でももっとも重要なのは動物の脳の肥大化だろう。自然環境の劇的な変化の中で、動物が生き延びていくためには、変化した環境に適応できることが必要だが、脳の肥大化は学習能力の向上を通じて、生き残る能力を高めるからだ。

環境の変化と動物の脳の肥大化との関連を追及した興味深い研究がある。ミネソタ大学教授エミリー・スネル=ロッド(Emilie C. Snell-Rood)女史の研究だ。女史はミネソタに生息する鼠や蝙蝠などの哺乳類を対象に、この100年間に彼らの脳がどう変化してきたかを調査した。その結果、白足ネズミやアメリカハタネズミについて、従来通り森や草原で暮らしている仲間と比べて、都会に進出した仲間の方が、6パーセント脳が大きくなっていることが分かった。蝙蝠についても、同じような傾向が確認されたという。

このことについて女史は、都会の環境がこれらの動物たちにストレスをもたらし、それが脳の肥大化を促進したのだろうと推測する。脳が大きくなることで、学習能力が高まり、生き残ったり子孫を残したりすることにつながったというわけである。今では、森に生息する仲間と都会に生息する仲間とが共存しているが、いずれ森の環境が悪化することにともなって、脳の小さい仲間は淘汰され、脳の大きい仲間だけが生き残る可能性が高い。生き物の進化は、そのような自然淘汰のプロセスを経て進行するからだ。

地上だけでなく、海洋においても、同じようなプロセスが進行しているのだと思われる。ひとつには地球温暖化の影響で魚の生息環境が悪化していること、また大型魚の減少で小型魚が生息しやすくなっていることなど、さまざまな要因が挙げられるが、それらが魚類の進化にどのような影響を及ぼしているかまでは、まだ解明されていない。(写真は National Geographic から)

(参考)As Humans Change Landscape, Brains of Some Animals Change, Too By CARL ZIMMER  New York Times





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